若松区地域ケア研究会質問事項の講演資料     2003.10.23
 

 若松区医師会館にて

10月23日 若松地域ケア研究会質問事項 (下記の質問によって、講演をした記録です)

  1. スウェーデンで痴呆高齢者が在宅生活を送っている場合、その生活の組み立てに特別な工夫があるのか。

    スウェーデンに於いては、痴呆高齢者に対するケアプランは、各地区にあります、コミューンの社会福祉課の職員によって、すべての補助金、住宅改善、ケアプランなどが、判定員、コンタクマンおよび家族と共に計画を立てます。その判定基本となるものは、医者の診断書に基づいています。これらの業務は、すべて社会法に基づいて実施されます。

    その構成は次のようになっています。
  1. 一ヶ月に5回以上の援助を受ける場合は、上限価格のSkr 1,544:−/月
  2. 一ヶ月に5回までの援助を受ける場合は、Skr 515:−/月
  3. 安心アラーム、一ヶ月の使用料は、Skr 122:−(ただし、ホームヘルプの経費を支払っているものは、この安心アラーム使用料は無料)
  4. ディケアーセンターにて、介護を受ける場合は、Skr 51:−/日(ランチ、昼食とコヒー代金は別支払いとなる)
  5. 支払いは、その月の利用が終わった翌月に支払う
  6. 居宅介護支援員(ケアマネジャー)が、その人に合ったケアプラン(日常生活のスケジュール)を作成し、在宅のサービスの提供(ボランティア、ホームヘルパー、ディケア等)を行っています。
  1. スウェーデンでは、痴呆高齢者が在宅生活を送るべきか、施設入所すべきかの判断は誰が行うのか。日本では家族の希望で決められることが多いが。

    基本的には、医師の診断が一番効力を持っています。家族の施設入居への申し出がない場合は、在宅介護となりますが、申請がなされた場合は、質問1で解答しましたように、判定員と家族および本人の三者で話し合うことになります。本人が希望する場合は、コンタクマンも参加することができます。あくまで、入居を必要とする本人の意思が第一に尊重されますが、家族および判定員が施設にて介護を必要と判定したが、本人が拒む場合は、医師の診断書が優先されます。ただし、何時に入居できるのかは、その住居地のコミューンの施設に席の空きがあるかないかで決まります。また本人の障害度および必要度において順番が確定されます。普通は、席の空く順番を待ちます。どうしても施設の入居が必要とされながら、そのコミューンに席がない場合は、他のコミューンに福祉課が問い合わせをして、空いているコミューンの施設に入居させることもできますが、この場合は、依頼したコミューンが、受け付けたコミューンにすべての経費を支払うことになります。
    また、特別車両等による移動の費用も、依頼したコミューンが受け持ちます。
     
  2. 日本では軽度の痴呆は在宅で家族が介護し、重度になり家族介護が困難になってから施設入所やグループホームを模索する傾向がある。スウェーデンでは軽度の痴呆から重度の痴呆に移行していく過程でどのように対処しているか。

    障害度数の判定と診断は医師がします。そのために、医師の診断書が施設に入居するかどうかの、判定資料となります。当然その時には、先に説明したように、家族からの申請がなされていることが条件です。本人に家族が いない場合は、本人が申請します。本人に申請すべき判断能力がないと認定されている者(医師の診断を必要とするものではない)には、本人のコンタクトマンが代理申請をすることになります。

    日本で言われているグループホームと、スウェーデンで言うグループホームとは、根本的に違います。日本のグループホームは、普通の高齢者ボケや脳血管性痴呆症およびアルツハイマー型痴呆症の高齢者を同時に入居させています。また、本来施設に入る必要のない軽度な痴呆症の高齢者も施設によって入居しています。

    スウェーデンの場合グループホームに入居している高齢者とは、アルツハイマー型痴呆高齢者のみで、しかも中度から重度の痴呆症の高齢者です。

    日本の場合、暴言を吐くからうるさいからとか、暴力をふるって、他人に迷惑をかけるからとか、徘徊して困るからなどの理由で、グループホームに入居させない 事があると聞いていますが、まったくそのやり方には反対で、そうした問題があるからこそ、なおさらグループホームやシュークヘム(日本で言うナンシーホームに類似した施設)に入居が必要なのです。それを明確に指導しない日本の法律および関係役所の欠点と不備がみられます。
     
  3. スウェーデンでは、痴呆高齢者がいる家族の痴呆に対する理解は、施設と連携がとれる程度に進んでいるか。

    施設に入居している高齢者がいる家族に対しては、常にインホーメーションがなされています。
    また、痴呆の疑いをもち始めた家族のために、 「痴呆をかかえる家族の会」があり、そこに相談をすることにより、痴呆に対する簡単な知識情報、または介護のための講習を受けることができます。また、同じ悩みを持つ他の家族と話し合いができる、ミーティングが定期的に催しされています。
    地域のコミューンにある、福祉相談所で、相談員を推薦してくれます。さらに高齢者オンプズマンに相談することもできます。
     
  4. スウェーデンにおける痴呆高齢者を対象とした社会資源にはどのようなものがあるのか。

    各施設(サービスハウス、グループホーム、シュークヘ、特別高齢者住宅ム
    etc)、ホームヘルパー、ディケアセンター、ショートステイセンター、家族のためのディケアーセンターetc。ボランティアシステムは、 一部教会の活動を除いて基本的にはありません。
     
  5. 痴呆患者に対応する場合、集団に対する対応と個別に対する対応で違いはあるだろうか。

    重度の痴呆症の場合は、集団でも個別でも対応策には差がありません。
    ここで言う痴呆症とは、アルツハイマ型痴呆症を意味します。それに比較して、中度の障害の場合は、1グループは最高6−8人が限度です。最低4−5人です。
    大きなグループの場合、叫ぶ人、暴力をふるう人、暴言を吐く人など集団になると、統一が取れなくなります。他の入居者に精神的に 動揺を与える確立が高くなり、無必要な混乱を招きます。
    また、少ないと、孤独感を持ち徘徊やイラつきが多くなり、社会的交流が少なくて不安を与えます。
    当然運営の問題で効率が悪く、経費面にも負担が多くなります。
     
  6. 脳血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆、精神障害による痴呆など、タイプによる対応の違いを教えて欲しい。

    まず、大切なのは、痴呆症の種類を正確に把握することです。

    脳血管性痴呆の場合、リハビリによって、日常の社会生活に復帰することも可能であり、半身麻痺で動かなかった手足が、リハビリによってある程度回復させることも可能です。これは、言語障害や、運動障害を持っている場合も、回復させることが出来る可能性は、とても大きいものです。さらに普通は、言語障害を起こしていても、相手が話す会話の言葉の理解力は、ほとんどの場合保存されています。返事をするのに適切な言葉の選択が困難なために、相手が求める返事が出来ないことが多いですが、これは必ずしも理解力の低下ではありません。

    また、その障害の度合いおよび、脳神経の障害の場所によって、言葉の理解と選択に時間がかかる人もいますが、これは痴呆症による直接の影響とはかならずしも言えません。そのために、必ず定期的な検査をして、本人の残されている部分と、破壊された部分を明確に把握して、リハビリなどを根気よく、続けることが大切です。私の友人の場合は、当初家族はまったくあきらめていましたが、このリハビリにより、回復した部分が多くあり、最初全身麻痺に近く、寝たきり状態でしたが、今では杖を利用して一人でトイレに行けるようになりました。 この友人の場合、わたくしは2年間ものリハビリを運動療法士、作業療法士、医療療法士、言語療法士たちと共実施した経験によるものです。そして、アルツハイマー型痴呆と異なり、治療がある程度可能であること、社会的生活にそれほど障害がないこと、普通の高齢まで長生きすること が可能です。

    次に、アルツハイマー型痴呆症の場合、現在の医学では、障害の進度をある程度抑えることができますが、まだ治療してよくなるまだにはなっていません。しかも確実なのは、初期段階から重度の段階になり、人生の終末期を迎えるのは、その障害の進度と、本人の肉体的な健康状態によりますが、普通10年から15年ほどで死亡します。

    初期の段階は、皆さんもすでにご存知の通り、なかなか正確には発見することも難しく、やはり早期に疑いを持った時点で、医師の診断をしてもらうことです。初期の段階では、痴呆症の進度をある程度抑えることが可能ですが、完全なものではありません。しかし、本人の日常生活および社会生活には大きく影響を与えます。

    初期段階で、家族がしなくてはならない事は、本人の記憶がまだ普通で健康な時に、本人の過去におきた人生について、出来る限り詳しく記録しておくことです。これが中度の状態から、重度に進んでいく時の、徘徊、叫び、暴力、精神不安定、理解できない行動など、原因を知ることの出来る貴重な資料となります。家族関係、戦争により兄弟や父母の死亡、けが、子供が先に亡くなっている等の場合は、その内容と原因および状況など詳しく記録しておくことが大切です。友人関係、職場、職種、会社の移動、 退職その時期などいろいろな情報を聞き出しておくことです。本人に記憶がない場合、本人の兄弟や家族からも聞いて記憶しておくことです。これらがすべて後日、本人を理解する大切な資料となります。相手に刺激を与えるような言葉は絶対に使わないことです。例えば「最近物忘れが多いね。」とか「メガネはここにあるでしょう。本当に最近だめなんだから」などの会話は、本人を精神的に追い込むことになり、本人の生活意欲をなくし、さらに落ち込むことにより肉体的活動もなくなり、進度を速める結果となります。

    また、アルツハイマー型痴呆症の特徴は、進度するに従い本人の精神年齢が下がっていきます。つまり過去の時代にさかのぼっていくことになります。本人は青年時代から少年期にもどり、それから幼年期となり、そして幼児期となっていきます。そしてその幼児期に戻りますと、人生の終末期を迎えることになりますが、注意を要するのは、肉体的には、目の前にいる人は高齢そのままです。つまり言葉使いなども、子供を相手にするような話をしますと、本人は自分を馬鹿にしていると理解し、暴言や暴力をふるい、時には反対に何も相手をしなくなり無口となります。あくまで、本人の年齢に相応した高齢者に対する話し方をすることが大切です。少年期から幼年期にはいりますと、行動が理解できないことがありますが、先に説明した本人の過去の記録があれば、それらの原因を把握することは容易になります。

    精神年齢が戻っている痴呆症高齢者と話をする時、相手の話をゆっくりと聞いてください。先に答えを催促したり、いそがせるような質問はしないでください。相手の目と同じ高さ、または下から上に眺めるように話をしてください。時には、相手の手を軽く握ることも必要です。また相手にふれる時は、ゆっくりと、特に肩に手をかけたり、身体にふれるときは、肩と腕のひじまでの間をふれるようにしてください。

    それ以外の場所(背中など)にふれる時は、相手にその準備が出来てから触れてください。
    痴呆症の人が声をかけたら、どんなに忙しくても、すこし立ち止まって聞いてあげてください。それから「忙しいからまた来るね」などと説明すれば、納得してくれます。何も聞かないで「後で来るよ」と立ち去って行くのは、相手に信用されない状況を作るのみです。

    徘徊対策は施設内に設備をするこみとにより、外出そのものを避けることが出来ますし、職員の負担も少なくなります。アルツハイマー型痴呆症の高齢者と話しをする時に、二つの事を同時に言わないでください。ひとつのことを話 し、行動し、それが終わってから、次の指示をするようにしてください。例えば「お茶を飲んだら、ここにお菓子があるから食べてね」と言われても、本人は、その二つの関連性が判断できません。必ず、まずお茶を飲ませます。それからお菓子を出して食べさせるようにします。外出の時も「今日はお店に行って、それから買い物して、帰りにお茶を飲もね」と言っても本人は、お茶が先で、その後買い物なのかなど、順序だてて行動を計画し判断することが困難で、結局は何も理解できないことが多いです。食事についても同じことが言えます。


    簡単な介護の一例:

    高齢者の便秘や下痢について:暴れたり
    、いらついて怒りやすいなどの原因に便秘があります。
    便秘で悩む人には、コヒーを飲ませると便がやわらかくなり、 通じやすくなります。
    下痢で悩む人には、濃い紅茶に砂糖を入れないで、飲ませると硬くなります。あまり続けて飲ませないことに注意、便秘になります。

    最後に精神障害による痴呆症の相手や介護をするのは、専門の知識を必要とします。必ず教育を受けている人と一緒に介護をしてください。例えば、痴呆症老人の暴力行為の中に、精神症状が原因である場合もあり、専門医に相談をすることが必要です。
     
  7. 痴呆患者に対して介護人の精神状態が影響するように感じるが、どうだろうか。

    脳血管性痴呆症の人は、予想以上に相手の精神状態の影響を受けます。いうまでもなく、精神面では、まったく正常だからです。会話する言葉の選択を誤らないことが必要であり、特に本人が受けている教育、職業を事前に把握しておくことが必要です。
    アルツハイマー型痴呆症の場合は、初期および中度の
    時期は、職員または介護人の精神状態は、まともに影響を与えます。重度の痴呆症の人には、この問題はほとんどありません。
     
  8. 痴呆患者に対して、よい影響を与える刺激について
  1. . スウェーデンでは痴呆高齢者の財産管理はどのようにしているのか。

    家族が居ない場合は、施設、あるいは一人で住んでいる高齢者には、かならずグードマンと呼ばれる担当者がおり、グードマンガ財産から、銀行などの日常の経済管理をしています。 時にグードマンの承認の元にコンタクトマンが代理することもありますが、当然すべての事ながら、買い物など金銭の移動は、すべて帳簿に記載して記録され、いつでもコミューンの法律家が来て 会計監査をしてもいつでも提示できるように、買い物の領収書などもすべて保管してあり、問題がないようにしてあります。施設の入居者の場合は、本人に家族がいても、コンタクトマンが管理をすることが多いです。

    ちなみに、グードマンは簡易裁判所で承認された人がなります。
     
  2. . スウェーデンの現場から見て今の日本の対応について伝えたい事を教えてほしい。