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痴呆症の介護について

 
痴呆症高齢者の介護に、スキンシップが良い。

初期から中度の症状にある痴呆高齢者は、自分がだんだんと物忘れが多くなり、痴呆症になりつつあることへの認識が強くなって、精神的不安定な時期である。

この頃から他人への不信感により暴言、暴力などが発生する。しかし、その反面自分を認めてくれる相手を求めている時期でもある。

この人たちが一番嫌う言葉は、「最近物忘れが多くなったね」、「また、忘れたの、さっきしてあげたばかりでしょう」などである。本人にはボケ症への認識を拒否する気持ちが潜在し、抵抗する言葉や態度となり、時には暴力へと進んでいく。

特に日本の男性には、まだ昔からの男性君主の認識があり、自分を馬鹿にしているのではないかという、不安と恐怖、時には「俺はまだボケていないぞ」という現実を拒否したい気持ちが強い。この人たちに、相手を指導したり、命令したり、注意するような言葉は、さけるべきであ。

常に相手を信頼し、個人を認めているという言葉と態度で接することが必要である。

スウェーデンに限らず、ヨーロッパでは、男女に関係なく喜びや悲しみなど喜怒哀楽の表現として、相手を軽く抱きしめたりする習慣がある。痴呆症高齢者の介護には、このスキンシップとなる、相手を抱きしめることは、精神的不安定をなくし、同時にまだ自分を気にしてくれる人がいるという認識を与えることにもなり、非常に良い効果のある方法である。

日本の高齢者で男性には、まだ若い女性に介護を受けていながら抱きしめられる習慣はないから、果たして有効かは疑問があるが、少なくても今までの経験から、痴呆症の女性には、このスキンシップは大きな効果がある。

日本のあるグループホームを訪問した時、音楽療法として、広い部屋で高齢者が職員と一緒に歌を唄っているのをみかけたことがある。職員は一生懸命になって歌の指導をしていたが、多くの参加者は、あまり興味を示していなかった。

なぜならば、それはグループでありながら、マンネリ化した活動であり、個人個人のコンタクトがない、単調なグループ活動だったからである。参加者の周囲にいる他の職員は、近くに立ったまま一緒に歌を唄っているにすぎなかった。

私が無表情で唄っている女性の側に座り、その女性の手を握って軽くゆすりながら唄うと、その女性は、最初驚きの表情で私を見つめていたが、かまわなく一緒に手をゆすりながら唄い続けている内に、その女性の顔には喜びの表情があらわれ、小さな声が少しづつ大きくなって唄いだした。

唄い終わった後、軽く肩を抱きしめて「楽しかったね」と耳元にささやいたら、「うん。うん」と言いながらとても嬉しそうに、私を見つめ強く手を握り返してきた。その女性の顔には生きている喜びを感じることができた。

そして、その女性は、私の手を握ったまま「ありがとう」と言った言葉は今も覚えている。その言葉を聞いて近くに居た職員は「この人が話すのをはじめて聞いた」と言った。

痴呆症高齢者の多くは、個人的コンタクトが少なくなり、職員は時間がなくなり一人になっている。ほんのわずかの時間、手を取って相手をしたり、抱きしめながら一言「元気?」と声をかけると良い。これほど簡単で効果のあるリハビリはないと思う。

( 2002年5月1日 記載 )

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