From Stockholm
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友人の介護記録

           
その8.即席手話

S氏の現在の症状は、記憶障害、言語障害、右上下肢の麻痺などがあるが、視覚及び聴覚は正常である。言語については、聞いた事をある程度理解出来るが、難しい言葉は理解出来ない。言いたい言葉を捜す事は困難で、言葉として発音することも困難な状態である。そのためS氏との会話は、私が質問し解答も準備して「はい」と「いいえ」の返事を受けることになる。

日本語で「はい」と「いいえ」は、声帯に負担が掛かり、言葉が出しにくいために、S氏はいつも「JA」と「NO」で返事をする。時には、S氏の書類作成に本人の署名が必要となり、即席の手話でもって、いろいろと質問を繰り返して、S氏の希望を聞き出さなくてはならないが、とんちんかんな会話になり、二人で大笑いしたことも少なくない。

そしてS氏の会話の内容を、その都度英語で妻に説明をするために、用件が済むまでには長い会話時間となった。

こんな事もあった。いつもの様に、S氏と話をしている時、急にS氏は人差し指を出して、上から下にゆっくりとゆれるように上下運動を続けた。私はペンと紙が欲しいものと思い用意すると「NO!」。次にS氏は窓を指して上下運動を繰り返す。開いているブラインドを降ろして欲しいのかと思い、下げかかると「NO!」。あれこれ数回試して、ついにギブアップ。

キッチンにいる妻を呼び「Sは何を言いたいのか?」と質問したら、妻に対してS氏は、窓の方を指差して、同じ上下運動を繰り返すのを見て、妻はいとも簡単に「ああ、窓の外には雨が降り出したと言ってるよ」と通訳、さすが夫婦だけあると感心、夫婦独特の手話では判る訳がないと、私はS氏と一緒に笑ってしまった。


(2002年10月14日 追記)

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